七宝焼きは、金や銀や銅などの下地にガラス質の釉薬を焼いて装飾をする伝統的な工芸品です。古代エジプト時代からはじまり、江戸時代にユーラシア大陸の交易路網であるシルクロードを通り日本に伝わりました。
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愛知県には七宝焼に由来する“七宝町”という地名があるんだ。その技術はこの地を中心に神奈川・東京・京都などに広がり、七宝づくりの伝統が受け継がれているよ
七宝焼きとは
金属である金や銀、銅などの下地にガラス質の釉薬を高温で焼いて装飾をする伝統的な工芸品です。
七宝焼きの歴史
古代エジプト時代からはじまり、江戸時代に日本にも伝わりました。金に青い縞模様で有名なエジプトのツタンカーメンの黄金のマスクも七宝焼です。起源は定かにはなっていませんが、世界では紀元前、遥か昔から作られてきた長い歴史があります。
ヨー ロッパに分散し、日本には、6・7世紀頃に中国・朝鮮を経て伝わりました。日本に現存する最も古い時代の七宝としては、奈良正倉院に保管されている鏡の裏面に七宝が施された「黄金瑠璃鈿背十二稜鏡」や、宇治平等院鳳凰堂の扉金具などが有名です。
一部の渡来人の技術によって作られたものと云われています。
日本で盛んに作られるようになったのは17世紀になってからのことで、京都の平田彦四郎道仁が江戸時代初期に朝鮮の工人に七宝の技術を学び、江戸幕府お抱えの七宝師となり、様々な作品を手掛けるようになります。
刀装具の装飾や名古屋城などの城や日光東照宮などの釘隠し、襖の引手などの装飾にも使われましたが、その技術は平田家の秘伝でありその用途も特殊だったため、万人に広まることはなかったそうです。
江戸時代末期になって、尾張の地で梶常吉が独学で七宝の技法を解明し、「近代七宝」が始まったとされています。
引用:加藤七宝製作所
常吉は江戸時代末期の尾張藩士の次男として生まれました。
七宝焼の美しさに衝撃を受けた常吉はオランダ渡りの七宝皿を手に入れ、周囲の反対を受けながらも、また失敗を繰り返しても諦めず10年以上にわたり研究をし続けます。その後貴重な舶来の皿を破壊して土台には銅が用いられていることに気がつきます。そして、研究を始めてから14年目の31歳の時ついにその製作方法を確立することに成功しました。
以降、紆余曲折ありながらも七宝は尾張で盛んに制作されるようになり、幕末には尾張の特産品として認識されるまでになります。
現在、愛知県には七宝焼に由来する“七宝町”という地名が存在しているほどで、その技術はこの地を中心に神奈川・東京・京都などに広がり、七宝づくりの伝統が受け継がれています。
日本の七宝
明治時代に入ると、日本において透明度の高い釉薬が開発され、日本の七宝は花開き、1900年のパリ万国博覧会でも称賛を受け、他に類をみない独自の美術工芸品にまで高められました。
それ以降、有線七宝を基本として、様々な新しい技法が生まれていきます。有線技法(植線)に着目したもの、素地の素材に着目したもの、明治の末には現在行われている七宝の技法が全て出そろいました。
伝統的な有線七宝の製作技術も一層細密化していき、職人にはより高度な技術と習熟が必要とされるようになります。七宝に関しては、明治末から大正初めに技術的な頂点を迎えたと言われており、現在では再現も難しいような、極端に細密な文様、そして鮮やかな色彩の作品が生み出されたのです。
その後、大富豪や皇室向けに作られていた七宝は、庶民のアクセサリーとしても大変広まりました。
そして今現在、花瓶や額をはじめ、仏具やアクセサリーなど様々な製品が作られています。
尾張七宝とは
伝統的な有線技法や本研磨技術を基本とし、愛知県は七宝町を中心としてつくられる七宝焼が“尾張七宝”です。
“尾張七宝”は、梶常吉に始まり現在まで継承・発展してきた、日本の七宝の本流です。
1995年には、産業として様々な経験や歴史が認められ、日本の七宝としては唯一、経済産業省の伝統的工芸品にも指定されています。
愛知県は七宝焼が有名な土地なのですが、それは江戸時代から明治時代にかけて愛知県にいた梶常吉(かじつねきち)さんが今の愛知県の七宝の基礎を作った人だと言われていることに由来しています。
また愛知県には「七宝町」があるのですが、それも、かつて七宝焼きの製造業が盛んだった地域だったためそういう名前がつけられています。
「七宝焼き」の名前の由来
七宝焼きの名前は、仏教典に由来します。経典によってこの七宝は異なりますが、仏教典では、金・銀・瑠璃(るり)・玻璃(はり)・蝦蛄(しゃこ)・瑪瑙(めのう)・真珠のことを「七宝」と呼んでいます。七宝焼きは、これら7つの宝のように美しい焼き物である、ということから名前が定着したといわれています。
七宝焼きの特徴
七宝焼きの特徴は、金属にクリスタルガラスを焼き付けることで、艶がある風合いになることです。アクセサリーにも多く使われていて、絵柄も自由に描くことが可能で、とても色鮮やかな色彩を出せるのも特徴の1つです。
また、陶芸と違い、焼くことで色が変化するわけではなく、化学的変化なので全て計算をして作られています。
七宝焼きの魅力
七宝焼きの魅力は、年月とともに色褪せることがなく、作ったときの色が永遠に残せます。そのため、親から子へ、また孫へと、想いとともに受け継ぐことが可能なのです。
また、窯の温度や作った人によって釉薬の厚さが微妙に変わるので、1つとして同じ色味がなくオリジナリティある工芸品であることも魅力の1つです。
七宝焼きの魅力は、なんといっても技法の幅広さです。初心者でも楽しめる簡単なものから、熟練の技が光る高度なものまでさまざまな技法が存在します。細かくするとかなり技法があるのですが、七宝焼の技法は、大きく分けて有線七宝・無線七宝の2つに分けることができます。
七宝焼きの技法
代表的なものをいくつかご紹介します。
引用:Creema
・有線七宝
引用:Creema
・無線七宝
銀線を使わない七宝で、釉薬を高く盛って焼き付ける技法で立体感が生まれます。
途中まで有線と同じ制作方法ですが、焼く前に銀線を抜きます。そうすることで釉薬の色の境界線が無くなり、境目がぼやけ、有線よりもやさしい印象の仕上がりになります。
そのような手順で作られた技法が本来の無線七宝なのですが、現在では、手順に関わらず線がない七宝=無線七宝と呼ばれています。
・省胎七宝(ショウタイ)
省胎の「胎」は、七宝の土台という意味を持ち、七宝焼の土台となる銅板を、出来上がってから溶かすことを「省胎」と言います。
銅の下地に模様を焼き付けた後、下地を溶かしガラス質の模様だけを残す技法です。ステンドグラスのような作品に仕上がります。
つまり、胎がなくなるので、ガラス質の釉薬だけ残ってガラスの器のような仕上がりになります。その分とても割れやすく脆いので実用品としては扱いづらい技法ではあります。
アクセサリーなどの身に付けるものではなく、主に、作家さんによる芸術作品に用いられることが多い技法です。
・透胎七宝(トウタイ)
まず銀で枠を作り、その中に色を入れて焼くのを透胎七宝と言います。こちらも省胎技法と同じく、表面が繊細でとても脆くなっています。
※現在省胎・透胎七宝はCreemaでの販売はありませんが太田七宝さんの店舗での販売は行なっているそうです。
・盛上(もりあげ)七宝
釉薬を高く盛って焼き付ける技法です。ぷっくりとした立体感が生まれます。
※ちなみに、この黒みを帯びたシックな赤色は赤透(あかすけ)。日本で生まれた釉薬なので、外国にはない色です。日本の七宝を語られるときによく出てくる色の一つです。
触ると凹凸があり、やや立体感のあるのが特徴。もともと七宝焼きは表面がつるっとした滑らかなもので、作業工程の最後には凹凸を削ってしまうんですが、この盛上七宝はわざと凹凸を作るために一部を盛り上げたり、凹んだ部分が作られている技法です。
七宝焼きの工程
七宝焼きは、使用する材料や釉薬により作り方が異なります。アクセサリーやお皿、花瓶など多くの種類を作りますが、どのように作るのか代表的な工程についてご紹介します。
1.素地・下地を作る
まず、金や銀、銅で素地を作ります。金属の板に下書きをして切り抜き、形を綺麗に整えます。プレス加工や木槌を使用して成形をしていくのです。
そして、釉薬がしっかりと付くように、素地の油分や汚れを、酸で洗うことによりベースが完成します。
2.銀線立て・釉薬を差す
純銀製の帯状の線を、立てていく作業を行なうのですが、この作業がとても大切です。繊細で高度な技術を活かしながら、模様の輪郭に沿って立てていきます。
釉薬を水や糊で溶いて、銀線で囲んだ模様の内外を、色彩豊かに色付けしていきます。釉薬は、水分を多く含んでいるので、しっかりと乾燥させなければなりません。
3.焼成・研磨
700~800℃くらいに熱した窯に入れ、焼成します。数分すると、釉薬が溶けて透明感のあるガラスになります。大きさによって焼成を何度か繰り返しますが、焼成回数が増えると釉薬の層が厚くなってしまうので、立て焼きや伏せ焼をすることでバランスを保つのです。
焼成のあとは、研磨し表面に艶を出します。はじめは粗目のペーパーを使用し、徐々に細かいペーパーで研磨することで、表面が艶やかで滑らかになります。
【製作に必要な材料】
〇焼成に必要な用具
電気炉・ガス炉・ガスバーナー
ステンレス金網
ステンレスパッド
ステンレスピンセット
くら(焼く時の金属台)
トング(ピンセット大)
〇盛り付けに必要な用具
ホセ(竹べら)
ステンレスピンセット
筆・筆洗い・布
金属板(盛付け作業用台)
〇その他
グラインダー・砥石・やすり・ホウズミ・板金用具・フリカケ具・針金・CMCのり又は白笈(はくきゅう)・アルコール・キムワイプ(ティッシュ)・ストップウォッチ
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素地
素地として使用できる金属は、金、銀、銅、丹銅などです。 金は18金以上の純度のもの、銀は純銀、銅は純銅を用います。丹銅は、九一丹銅と言って、銅90%亜鉛10%の割合の合金を用います。 不純物の多い金属は発色が悪く、使えません。ですから、真鍮などには焼きつきませんし、また鉄にも焼付けは出来ません。アルミニュームは、以下の表のとおり七宝釉薬の軟化度よりも融点が低いため、使えません。
金属の融点
金属名 | 融点 | 金属名 | 融点 |
純金 | 1.065℃ | 丹銅 | 1.000℃ |
純銀 | 960℃ | 鉄 | 1.350℃ |
純銅 | 1.083℃ | アルミ | 658℃ |
・銅
純銅:赤系の発色に難点があるが、高温で焼成すると発色が良い
(赤系釉薬使用時の注意)白透を盛り付け焼成後、赤系の釉薬を盛り付ける。
丹銅:亜鉛を少量加えて赤色の発色をしやすくした物 高温焼成や何度も焼くものには不向き
・金:純金を使用する
・銀:純銀を使用する
(赤系釉薬使用時の注意)白透を盛り付け焼成後、赤系の釉薬を盛り付ける。
釉薬(水に浸した物)
七宝釉薬の主成分
硅石: 発色を左右するので純度99%以上の、上質なものを使っている。
鉛丹: 金属への密着を良くする。屈折率をたかめる。
硝酸カリ: 発色、色調を良くする。
炭酸ソーダ:ガラス質の透明度を良くする。
ほう砂
七宝の各種釉薬の原料は珪石(けいせき)・鉛丹(えんたん)・黄色酸化鉛・鉛白・硝石・硼砂(ほうしゃ)・炭酸ソーダなどが主成分であり、さらに乳濁色として亜ヒ酸・酸化第二錫(すず)・弗化(ふっか)ソーダなどを使用します。成分的には、七宝釉薬の主成分は、珪石・鉛丹を主としたカリ鉛ガラスであるということがいえる。
- 成分は、珪石・鉛丹を主としたカリ鉛ガラス(クリスタルガラス)
- 主成分を土台について色を作ります
- 各種の色と成分
・白・・・亜ヒ酸・酸化錫
・緑・・・酸化銅・酸化クロム
・青・・・酸化コバルト
・黄・・・クロム酸カリ・酸化アンチモン・酸化銀
・茶・・・酸化鉄・酸化第二鉄・酸化クロム
・紫・・・二酸化マンガン・酸化ニッケル
・赤・・・塩化金
・黒・・・酸化コバルト・酸化カリウム・酸化マンガン
・橙・・・ウラン酸ソーダ・硫化カドミウム
・朱赤色・・・セレン赤
このような成分を壺に入れ1000℃で溶かし、それをすぐに冷水に入れます。
≪釉薬の特徴≫
七宝の釉薬が、水彩絵の具や油絵の具のような一般の顔料と全く異なるのは、次の5つの点です。
- 釉薬は水にも油にも溶けません。
- 釉薬は、熱を加えることによって初めて融けます。
- 釉薬は熱を加える(焼成)ことによってだけ素地金属に密着します。
- 釉薬は、熱を加えて焼く前と、後では色により多少あるいは著しく色が異なります。
- 数色の釉薬を混ぜ合わせても、絵の具でできるような色は全く出来ません。(例えば、赤と白の釉薬を混ぜるとピンクにはならず、赤と白の梨地になります。)
≪釉薬の種類≫
・透明・不透明・半透明・窯変・高温・立物用・高温
透明釉薬の適温表
色系統 | 色名 | 顔料 | 軟化度 | 適温(℃) |
白透 | 白透 | なし | 680℃ | 780~900 |
赤透 | 桃透、中赤、金赤、本紫等 | 金 | 700℃ | 800~850 |
青竹 | 青竹、青透、エメラルド等 | 酸化銅 | 680℃ | 800~900 |
紺青 | A紺,C紺,H紺等 | 酸化コバルト | 700℃ | 750~900 |
紺水 | 水紺、紺水、水透等 | 酸化銅、酸化コバルト | 680℃ | 700~900 |
黒 | 墨透、黒等 | 混合 | 700℃ | 750~900 |
紫 | 赤紫、藤紫等 | 二酸化マンガン | 700℃ | 750~900 |
茶 | 金色、金茶、ウス茶、濃茶等 | 酸化鉄 | 700℃ | 780~850 |
その他 | * | * | 700℃ | 800~900 |
不透明釉薬の適温表
色系統 | 色名 | 顔料 | 軟化度 | 適温(℃) |
白 | 白 | 亜砒酸、錫 | 700℃ | 800~900 |
黄 | 黄、クリーム | クロム | 700℃ | 750~850 |
緑 | 青芝、特青、オリーブ | 酸化銅 | 700℃ | 800~850 |
朱赤 | 朱赤、赤橙、オレンジ | セレン朱 | 680℃ | 750~800 |
桃 | 桃、特桃 | 金 | 700℃ | 750~800 |
紺 | 空、濃空、紺 | 酸化コバルト | 700℃ | 800~900 |
茶 | カバ茶、トビ茶 | チョコレート色素 | 700℃ | 800~900 |
その他 | トルコ青、ウスグレー | トルコ色素 | 700℃ | 800~900 |
銀用釉と、銅用釉の相違点
銀用釉は銀素地に使うもの、銅用釉は銅素地に使うものと、勘違いして思い込んでいる人が沢山います。しかし、それは、正しくはありません。ほとんどの場合、銀素地に銅用釉を使っても、その逆でも、ちっとも差し支えはありません。
では、銀用、銅用の区別は一体何のためにされているのでしょうか。それは、「耐酸性の問題」です。
釉薬の性質の中で、屈折率を良くすることと耐酸性を高めることとは、決して両立しない相反する性質なのです。
屈折率を良くしようとすると必然的に耐酸性は弱くなるし、耐酸性を高めれば屈折率は落ちてしまうのです。従って、焼成しても酸化することのない銀素地の場合は「酸で洗う必要がない」ため耐酸性を抑えてその代わりに屈折率を良くしてありますし、酸化する銅素地の場合は、「酸洗いする必要が生じるため」に屈折率を犠牲にしても耐酸性を高めておく必要があるのです。ですから、私達が釉薬を選ぶ時に必要な注意は、「酸洗いをするかどうか」だけなのです。酸洗いする必要のある技法を使う時には、銀用釉は絶対に使わない、と、それだけ注意してくださればいいのです。
ただし例外もあります。それは、白透です。銀素地の上に銅用白透を用いると釉薬中の残留アルカリ分が銀と反応して淡い黄色の濁りを生じます。銀素地上で完全な透明を得るためには、銀用白透を使わなければなりません。
銀と反応して変色する釉薬
釉薬の中には、銀と化学反応を起こして変色してしまうものがあります。
上記の白透もそのひとつですが、その他に、中赤透などの赤系の色、桃透などのピンク系の色、橙透などのオレンジ系の色などです。また、金茶・ゴールドなどのような茶系の明るい色や、ゴールドブルーなど、温度によって又は焼成回数によって変色するものもあります。また、半透明色は銀と反応する色が多いようです。
これらの釉薬を銀に焼き付ける場合は、銀素地と釉薬が直接触れないようにしなければなりません。一旦、反応しない色釉薬を焼き付けた後に反応する色を上からかけて焼成します。例えば、銀用白透などをあらかじめ焼成して、その上から桃透などを盛り付けて焼成するわけです。
この場合、針の先程のピンホールが合っても化学反応は起こってしまうわけですから、下地は丁寧に作らなければなりません。
≪釉薬の準備≫
・釉薬を乳鉢に入れ乳棒で細かくします。(100メッシュぐらい)
・水洗いをします(チリや不活性ガスなどを取り除く)
適当な大きさのボール等に釉薬・水を入れホセを使いお米を研ぐ要領で洗います。最初は白濁の上澄みがでますが、これが消えるまで洗えば完了です。
この時、洗い出された細かな釉薬はバケツ等で受け、裏釉に混ぜて使います。
・釉薬を容器に入れます。(容器には必ず、色番、色名を書く)
・釉薬が濁っていると作品の汚れや発色が悪い原因になります。
釉薬はガラスの粒です。粒同士の接着性はなく、乾燥すればバラバラになってしまいます。
そうならないようにのり(CMC:カルボキシメチルセルロースナトリウム)を釉薬に混ぜて使います。
のりの濃度は0.5~2%(なるべく薄いほうが望ましい)
【製作プロセス】
製作の流れを説明します。
引用:七宝工房くじゃく Creema
【作業手順】
〇電気炉の温度を800℃~850℃に上げておきます。(釉薬やミルフィオリによって温度を変えます。)
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釉薬を浸るくらいの水に浸けておきます。(釉薬に不純物があれば取り除いておきます)
〇材料を準備する。
七宝焼の胎になる銅・銀の材料を選びます。
〇釉薬(絵の具)を準備する。
▲色を差す時に使用する釉薬たち。淡い色から鮮やかな色まであり、カラフルで楽しげですね。
釉薬はガラス質の粉状です、透明・半透明は4~5回、不透明は2~3回水洗して不純物を取り除きます。ちなみに、裏引き釉薬は水洗いしなくても大丈夫です。
〇七宝釉薬(七宝絵具)の水洗い
釉薬には、色の濁りの原因になる微粉が混入しているので、使用前に必ず水洗いしてこれを取り除きます。裏引きの場合はこれは必要有りません。
釉薬、容器、水、ポリ容器、ホセやスプーンを準備
釉薬(30g)とそれを入れる容器。 水差し・ホセ・ポリ容器(洗面器やボール)を準備します。 ここでは、釉薬を入れる容器のまま、水洗いしますが、 湯飲など、もう少し大きめの容器の方が楽に作業を行えます。 またポリ容器は、出来ればそれ専用のものを準備して下さい。
水洗い
釉薬の入った容器にきれいな水を注ぎます。
ホセでよくかき混ぜ白濁等の原因となる微粉末を浮き上がらせます。
一呼吸置いた後、濁りの水を静かに流します。
〇のり(CMC)を準備する。
CMCはカルボキシメチルセルロースという化学のりで白い粉末状の物質です。これを水に溶かして使用します。表釉には、0.1%(1g/1000cc)溶液を30gの釉薬に対して2~3滴を、裏引き釉には0.5%溶液を水代わりに使用します。
溶液の作り方
CMCはカルボキシメチルセルロースという化学のりで白い粉末状の物質です。これを水に溶かして使用します。表釉には、0.1%(1g/1000cc)溶液を30gの釉薬に対して2~3滴を、裏引き釉には0.5%溶液を水代わりに使用します。
また、CMCはフリットや銀箔が落ちないように安定剤としても使用します。
割合は
(表用) :水1000:CMC1(0.1%)
(裏引き用): 水200:CMC1 (0.5%)
〇のりを釉薬に入れる
(メモ)釉薬を盛る前に釉薬の準備が必要です。表はのり(CMCのりもしくは白笈(はくきゅう)を一まわり釉薬にそそぐ。変色するので混ぜる。 ※裏の釉薬は初めからのりが含まれている。
CMCを釉薬30gに対して1~2滴、裏引き釉薬には、3~4滴入れ、よくかき混ぜて使用します。
〇素地づくり
土台となる素地を作っていきます。作る大きさに合わせて銅板を切り出したら、木槌で叩いてカーブをつけます。こうすることで施釉するときに割れにくくなります。
そのあとは「裏引き」と呼ばれる、裏部分に釉薬を施す作業に移ります。表だけに釉薬を塗るとバランスが悪くなり割れやすくなってしまうため、素地には裏表両方に塗ります。次に銀箔を貼り付ける「銀張」を行います。後の工程で割れてしまうことが無いようにする工夫が詰まっています。
まず、銅板を作りたいものの大きさに切り出します。
その後、木槌で叩いてカーブを付けます。カーブがあることで釉薬をのせても割れにくくなります。
(メモ)ふちの叩き忘れが多いため注意する。丸みをおびるまで叩く。
銅板の切り出し〜木槌でカーブをつける工程の後、銅板に「裏引き」(裏にだけ釉薬を乗せる)を施します。釉薬を表面だけに塗るとヒビができやすくなり、割れてしまいます。なので、裏面にも釉薬を塗って、バランスが取れるようにすることで破損を防ぐことができます。
その後、銀箔を貼り付ける「銀張」を行います。
〇植線
作りたい模様の輪郭に合わせて銀線を立てていく作業を行います。この工程は有線七宝のメインとも言える、工程の中で最も手間をかける部分になります。
金属線はピンセットでつまんで欲しい形に変形していきます。時折、熱しながら適度に柔らかくして変形しやすくします。
アクセサリーなら1日、2日ほどの時間でできますが、大作となれば、何週間もこの作業に時間を費やすこともあります。線が曲げやすくなるように、銀線を焼いて柔らかくし、曲げていきます。
〇脂分を取る(釉薬を盛る準備)
油分を取るため、コンロなどで空焚きするか、脱脂液(中性洗剤を薄めた物)」で表面の油分を取り除きます。
(メモ)油分取りは空焚きがよい。乾燥はコンロで空焚きをして乾燥させる。赤→紫→グレーになるまで熱する。暑いのでピンセットで運ぶ。
*釉薬を盛付けた後、銅板をくらに乗せるので、銅板に対して少し幅の狭い炉焼板を使用しています。
銅板の裏には熱処理後の変形を抑えるために、あらかじめガラスで裏引きしておきます。市販品もあります。
〇裏引き
(メモ)すでに裏引きしてある素地もあります。
裏引きは0.5mm~1.0mm
裏引きをして焼成せずに充分乾燥させてから表釉を盛り付ける方法と、いったん焼成してから、焦げた表面を希硫酸等でミガキだししてから表釉を盛り付けする方法があります。
素材の銅板には指紋などの油分が付いているため、そのまま釉薬をのせると「ダマ」になって伸びにくい。
〇盛り付け
竹ホセで、縁の方まで盛り忘れの無いように盛りつけをする。0.5mm~1mm程度の厚みで裏釉薬を盛ります。素地が見えないように縁まで丁寧に盛ります。
出来るだけ均等に盛りつけをして、布を軽く当てながら水分をとばします。
〇乾燥
網に移して完全に乾燥させます
もしくはコンロで水をとばします。乾燥させずに焼成するとパンといって割れることがある。
〇焼成
電気炉の温度は、約800℃~840℃。
焼成時間、約1分。 釉薬が充分溶けたのを確認して、電気炉から取り出します。
※炉内温度が高温になっています。
火傷をしないように、充分に気を付けましょう
(メモ)850℃~900℃ぐらいでもよいが、950℃だと銅板が溶ける。
750℃ぐらいだときれいにできるものもある。絵の具によって必要な温度が違う。
特に赤は850℃必要。
鉄の素地の場合、ホーローをつけて線を立てるとき、釉薬が沈むので低めの温度で焼成する。
取り出した直後の様子。
真っ赤に焼けていますので、ここでも火傷をしないように充分気を付けましょう。
表側の様子。
銅板の表面が黒く焦げた状態になっています。
〇酸洗い
この酸洗いは空焼きの時に生じた酸化膜を塩酸:硝酸などで洗い素地の表面を綺麗にします。このとき酸洗いが汚いと透明色特にピンク:赤:青竹などの発色が悪く綺麗に仕上がりません。
(メモ)希硝酸はピンセットで出し入れを頻繁にすると溶けて折れる場合があるので、プラスチックのカゴを使用し出し入れするとよい。
作り方例:酸処理をする
希硫酸などで素材が手で触れる位になったら、10~20%希硫酸液につけておきます。
数分間たったらピンセットで取り出します。
希硫酸液から取り出した様子。
まだ、表面はあれているので磨き出しをします。水を入れたボールを用意して金ブラシを使って磨き出しをします。
(この写真は、参考のために木台に置いていますが、実際には希硫酸液から直接ボールに入れます。)
(メモ)光るまで磨く。使ったピンセットは洗っておく。
磨き
金ブラシで磨いていくと、銅板本来の色になっていきます。磨き残しが無いように磨きだします。
〇施釉
先ほどの工程でかたどった模様に、釉薬の色を差していきます。釉薬をホセ(竹べら)ですくって銅板に盛付けます。(塗るではなく、「盛る」という言葉を使います)
1mm~2mmの厚さで盛り、布で水分を取ります。裏と表の釉薬は0.5mm~1mm空ける。
銅板の縁のぎりぎりまで釉薬をのせます。のせすぎると電気炉で融かしたときに、こぼれるので注意。
このとき釉薬は、金属線の背を少し超えたところまで乗せていきます。手作業になるので、はじめのうちは表面に凹凸ができてしまいます。しかし、最終的には表面の高さが均一になるように研磨をして滑らかにします。
出来るだけ薄く、かつ盛残しが無いように水を利用して均等に盛り付けます
【きれいに盛るコツ】
少量の釉薬をすくい取って銅板の上に置きます。盛った釉薬の中心付近をホセで軽くたたいて、釉薬を広げます。
釉薬できれいな絵も描けます
異なる色の釉薬を使用する時は、新しいホセを使うか、洗ってから使います。
*ホセを水の中に入れて少し振ると、釉薬が沈み、きれいになります。
〇焼成
焼成の前にしばらく放置して、釉薬表面を少し乾燥させるかコンロで空焚きします。
釉薬・ミルフィオリでの盛り付けが終わったら、銅板をくらに乗せます。
このとき、くらに釉薬やミルフィオリが付かないようにします。
釜(電気炉)内の温度は800度~850度ぐらいです。この焼成によって製品の出来栄えは大きく左右されます。温度により釉薬び発色が多少異なっています。
たとえば透赤や青竹などは高温で、不透明の朱赤などは低温の方が良いとされます。現在は電気炉という文明の利器を使い焼いておりますが、道仁の頃は炭火が陶芸家が使う釜で焼いたのでしょうか。現在では考えられないような苦心があったでしょう。
焼成は重ね塗りをしたり、調整したり、納得のいく出来になるまで繰り返し行います。釉薬の色を重ねていくほど、色は深みを増していきます。
(メモ)くらはステンレスが多い。銀の時はくらとの接地部分が黒くなってしまうので、銀のくらののせるとよい。
素地作りや植線など、作業工程の間に、焼成を何回も繰り返していきます。
〇焼成・電気炉内の釉薬を確認します。
電気炉ののぞき窓から中を確認します。釉薬が次第に溶けて粒粒の表面がツルツルのアメ状になったら、電気炉から取り出します。取り出した作品はかなりの高温なので、火傷しないように気を付けて必ず耐火作業台の上に置いて徐冷します。
〇七宝焼きの完成
釉薬の表面が滑らかに融けていたら、くらごと電気炉から取り出し、ステンレスパッドの上に置きます。
しばらくしてから、銅板をくらから外してステンレス金網の上に置いて冷まします。
ガラスは見た目では温度が分からないので、火傷に気をつけます。
〇片付け
(メモ)使った釉薬は流れないように水を入れかき混ぜてのりを流しとる。その後は水を少しいれておく。
釉薬は水道管が詰まるので注意する。
使った絵の具を元の位置に戻し、ホセと筆、ふきんをあらい乾かしておく。
〇仕上げをします。
焦げた縁をヤスリで研ぎあげて、枠やピン等を接着いて完成です。
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